お隣さんと内緒の恋話


嫌な予感は その場で当たってしまう。


「 加寿也さん、今度 デートしてください、ひまつぶしに 」

「 柚奈!?」



柚奈は何を言い出したかと耳を疑った。


加寿也さんにデートなんて、しかも ひまつぶしにって…

どんな誘い方よっ

しかも… 一応 先生の雅くんがいる前で誘う!

あり得ない、ほんと あり得ない。



聞いていても何も言わない雅に、私は葵を見るしかない。



「 兄貴… 」

「 雅、生徒から お誘い受けたけど?」


そう、雅くんかピシッと言えば柚奈は…


「 節度あるデートならな 」


おいっ!!



「 雅くん!ちょっと、どうかしてる! 柚奈もだよ、壮真と別れたばっかだから ヤケになってるだけよ、加寿也さんも やめて!」

「 椿!人の恋路は邪魔しないんでしょ、デートするだけだから いいでしょ!」



柚奈っ… んもう、どうすんのよ~


言い出したら聞かない柚奈、雅は止めない、葵は口出ししない。


私は?


どうしたらいいの…



壮真は後輩の加純と付き合うことにした。

それを思えば 柚奈は誰とどうしようと自由。

決めるのは 柚奈。



「 …わかった、柚奈の好きにすればいいよ 」

「 ありがと 椿。加寿也さん、どうですか?」

「 俺はいつでも 」



は~… 知らないからね、私は。

雅くんも雅くんだよ、なんで止めてくんないかなぁ



一人悶々とする私をよそに、柚奈は楽しそうにしている。

ずっと泣いていた柚奈を思えば 加寿也さんがいてくれるのは いい事かもしれない。

ただ、加寿也は雅と同じ大人、私たちより 当たり前に大人。

私にはそれが不安要素だった。

私は隣にいる葵の手をこっそり握ると、葵は握り返してくれた。


それが どんなにホッとしたか…