お隣さんと内緒の恋話


柚奈を真ん中に、私と香伊羅は 目の前の光景を 漠然と見ていた。


「 壮真先輩、今から帰るんですかぁ?」


あれ、1年の…


「 そうだけど 」

「 だったら また加純を送ってください!いいでしょ、先輩 」


何言ってんの、あの子達… またって何…


「 ん~… いいけど 」


いいの! うっそ…


「 ほら、加純!先輩と一緒にね 」


加純… って言うか 柚奈がここにいるのに、壮真の奴!


壮真の横に照れながら立つ加純を私たちが見つめていると、ふいに後ろを振り向く壮真が、柚奈に気づいた。

私の耳に聞こえた小さな言葉。

柚奈が 壮真…と力なく呟いた言葉。

それは香伊羅の耳にも届いたようで私を見る。

動かない、動けない柚奈に、私と香伊羅は柚奈の腕を組み壮真と加純の間を わざと 通り抜けた。


「 柚…」


壮真が思わず呼び止めようとしたのか、柚奈を呼んでいた気がしたが、私と香伊羅は歩き続けた。


「 椿… 」

「 なに?」

「 椿… 私、私…」


柚奈の声が震えてる。

柚奈はまだ当たり前に壮真が好きだ。

だから、柚奈は静かに泣いてる。

柚奈だけでなく、私や香伊羅から見ても、加純は壮真に恋している。

やりきれない気持ちが私たちの中で感じながら ただ帰るしかなかった。


そして校門まで来ると、葵が私を待っていた。


「 椿、上山くんいるよ、行ったら?」

「 え… 」


いや、でも それはちょっと…