髪が違うだけで さほど変わらない見た目の葵は雅そのもの。


「 昨日 葛西くんが見たのは、葵よ。雅くんのジャケット着た葵、わかった?」

「 けど結局は兄弟だからな 」


うっとうしいわぁ、葛西くん!

なんで わかろうとしないかなぁ…


「 …はぁ。葛西くんて、玲音みたいだね。玲音はどんなに言っても わかろうとしなかったし 」

「 あいつと一緒にすんなよ!やめろ。わかってるし、嘘つくなら とことんするだろうし…
まぁ、でも、上山だったっていう証拠は?」


まだなの! まだ、わかんないわけ?

呆れた…


深く息を吐きながら俯く私に 葵が突然 私の肩を掴み 顔を上げさせた。


「 椿… 」

え…


「 っ!?」


きゃあああああぁっ!!

うそでしょ!葵ーっ…


「 おっ、おいっ!上山っ 」


何が起こったか?


「 やれやれ、大胆だな、我が弟は 」


キスよ、キス。

ベンチシートは半分が壁に囲われてて見えない上に、私は奥に座っているため 葵が視角となり見えにくい。

まさかのキスに驚き真っ赤な私は 葵を見つめ、葵もまた私を見る見つめ 笑顔になる。


「 ビビった?」

「 な… 葵!もう、誰が見てるかわかんないのに、しかもここフードコートだよっ
恥ずかしいし、こんな顔じゃ歩けないじゃん 」


顔が熱すぎるって。


「 なんで? 椿は 俺だけ見てればいい。他は どうでもいいよ、葛西も西脇も、雅も…
俺だけが椿を見てるから 」


葵…

もう、どうして そう サラッと言うかなぁ。

どんどん、葵を好きになっちゃうよ…


葵はジャケットを脱いで 私の手を繋ぎ雅に言う。


「 雅、俺ら行くから 」


私と葵には、葛西はもうどうでもよくなっていた。

二人で席を立ち、フードコートを後にした。


「 …先生、あいつら何なの?めちゃバカップルじゃん 」

「 な、そうだろ。だから、勘違いや思い違いは忘れろ、あの二人が恋人同士だからな、俺じゃない 」


そう言って 雅もフードコートを出た。

残された葛西は鼻息ひとつと呟いた。


「 アホらし…」