それを見たあたしは伊東さんにこれ以上何も聞かなかった
ううん、聞けなかった。
「鈴さん、出来ましたよ。」
結い終わったのか伊東さんはあたしの肩をトントンと叩く
「ありがとうございます。…けど、この髪型なんだか首元が寒いです。」
「可愛くなるのに寒さなんか関係ないわ。次は私の方を向いて目を瞑ってくれる?」
「はい。」
「いい子ね。」
言われた通りに、伊東さんの方を向き目を瞑った。
すると唇に伊東さんの指が触れ何かを塗られた。
「目を開けてご覧。」
「……?」
目を開けると何も変わってないように思えた
「ほら、これで顔を見てご覧よ。」
伊東さんに手鏡を渡され自分の顔を見た
「これ…は、なんですか?」
唇は何時もより赤く染まっていた
「知らない?これは板紅といって女の人の唇に塗るものなのよ。ほら、これあげるわ。」
伊東さんから受け取ったのは小さめの皿
それと先が細い筆
「使い方は、この筆に少し水をつけてその筆でこの皿の中についてるこの黒色に筆を走らせるの。そして走らした筆を唇に当てるように塗るの。」
「頂いてもいいのですか?」
「えぇ。勿論いいわよ。」
微笑みながらそう告げる伊東さん



