「大丈夫ですよ。私は言いませんから。鈴さんが裏切らない限りは。」
「…っ!」
「ふふっ。それより、あの噂は本当に事実なのかしら?」
「う、噂?」
今度は何なのですか?
「私のような、反幕派の者たちの間で噂になってるのですがね。特に土佐藩の間ではね。こう見えても、色々と情報は私の耳に入りますから。」
「土佐…?」
「あの岡田以蔵が笑った、とか。
あの岡田以蔵に女ができた、とか。
そりゃもう色々と。」
「以蔵さん、笑わない人だったのですか?」
「さぁ、会ったことはないから分からないわよ。岡田は裏で『人殺しのからくり人形』と呼ばれてたくらいですから。笑わなかったのでは?」
『人殺しのからくり人形』
伊東さんは以蔵さんのことをそう呼んだ
違う
以蔵さんは
『人殺しのからくり人間』
じゃない
『岡田以蔵』
なんです
「以蔵さんは、そんな人間ではないです。優しくて、強くて、いつも守ってくるあたしのかけがえのない人です。
人殺しだって、新選組だってそうじゃないですか。幕府だって、長州だって、土佐だって、刀を持った時点で皆『人殺し』なんですよ?実際、伊東さんだってそうですよね?」
あたしは伊東さんをじっと見据えた
「……」
「…っ。」
「……」
怖い
あたしをじっとみる伊東さんが怖いと感じる
怖い
けど、あたしはもう怯まない



