「それにしても、おかしいですね。ここは女人禁制なのですがね。君は近藤さんに許可をとってもらってるのかしら?」
「えぇ、勿論です。」
あたしは負けずとも男を睨んだ
月明かりで照らし出されたその男は、綺麗な顔立ちをしていた
その綺麗な顔立ちが余計にあたしには不気味に見えてしまった
「それにしても、その高い声に、その顔は覚えがありますね。」
怖い
あの時来島さんの時に感じた『怖』さとは違う
この男はあたしを舐め回すように見ていた
「…鈴鶫、ですかね。」
男はあたしの耳元でそう囁いたものだから、背筋がゾクリと寒気がした
「…っ、」
「おや、その顔は図星ですか。」
「ち、違います。あたしは鈴です。『鈴鶫』という名ではありません。」
「いいえ、私が見間違える筈がありませんよ。」
「たとえ、あたしが『鈴鶫』だとしても、今記憶を失っているのですから。真の名前すらも、知りませんから。」
「…岡田以蔵。」
ポツリと、男は呟いた



