「以蔵さん…」


また名前を呼ぶ


目を瞑ると以蔵さんとの思い出を思い出す


楽しかった事、
悲しかった事、
嬉しかった事、


いろんな思い出が出てくる


消したはずの記憶がまた蘇る


今日だって、


以蔵さんとよく行く行きつけの蕎麦屋に偶然入った


それに


『はぐれたら困るだろう?』


と手を差し伸べた山崎さんと以蔵さんが重なって見えた


あたしは不意にも照れてしまった


山崎さんは以蔵さんと何処か似てる部分がある


似てもいないのに、何処か似てる


だから、記憶がなかった時のあたしは山崎さんに胸が高鳴っていたんだ。


そう考えたら、あたしには以蔵さんしか考えてないと思う



いつだってあたしは以蔵さんに恋してた


「…返して…、以蔵さんを返して…」


あたしはぎゅっと髪飾りを握りしめ祈るよう手を握った