「行っちゃいましたね」
「だな。なんか夕餉いらなくなったな。」
「ですね。」
お団子をたくさん食べ過ぎたせいかあまりお腹はすいてない
「あたし、山縣さんに夕餉いらないって伝えてきますね。」
「駄目だ、俺が行くから待ってろ。」
そう言ってさっさと以蔵さんは走って降りて行った
「遅いです」
たった伝えて来るだけなのに帰ってくるのが遅いです。
もう一刻は過ぎてます
もしかして、藩邸まで押しかけてきて捕まったとか?
あたしは途端に不安な気持ちになった
いてもたってもいられなくて立ち上がったその時部屋越しから以蔵さんの声が聞こえる
「鶫、襖を開けて」
「……っ!」
あたしは急いで襖を開けた
「遅くなってごめんな。ほら、握り飯だけでも食べろって言われたから。」
手にはお皿の上に沢山のおにぎりがのっかってあった
「……っ。」
目の前がまた霞む
そんなあたしを見た以蔵さんは机にお皿を置き、襖を閉めた
「泣くな。」
「……っ。」
「泣き顔ばっかの鶫は嫌。もっと笑ってろよ。な?泣いてる鶫も好きだけど、笑ってる笑顔の鶫が俺はもっと好き。」
あたしは涙を拭って以蔵さんに笑って見せた
「ん、可愛い。」
ちゅっと軽く口付けされた
「冷めないうちに食うぞ。」
「はい!」
あたし決めました
以蔵さんといられる時はせめて笑顔でいよう
遅いかもしれないけどあたしは決めた
珍しくあたしたちは2人っきりで夕餉を食べた
夫婦になって一緒に住むようになったらこんな感じなのかな
なんて先の事を考えて楽しむあたしがいた
それから夕餉を食べたあとは順番に風呂に入り、屋根に登り空を見上げた



