帰った頃はあたりは真っ暗になってお月様が出ていた
「鶫。」
後ろから名前を呼ぶ声がした
とても愛おしい声
あたしは振り返った
「以蔵さん?どうしたのですか?」
息が荒い以蔵さんが汗を垂らしてあたしを見ていた
するとあたしに近づいて抱きついた
「もう、どこにも行かないでくれ。」
この言葉がどれほど欲しかったか
あたしをちゃんと見てくれてるその言葉
あたしは以蔵さんを抱きしめ返して耳元で囁く
「あたしはもうどこにも行きませんから。約束です。」
「あぁ、約束だ。」
「…はい。」
あたしは久しぶりの以蔵さんの温もりを確かめるようにきつく抱きしめた
「俺たちが気絶してる間に、鶫はいなくなるしで、大変だったんだからな」
「気絶…?」
「あぁ。そのあと何か忘れかけてるような気がするんだけど。」
忘れ…
籟様だ。
以蔵さんたちの記憶の一部を消したんだ
だから、こんなにも以蔵さんはあたしに優しいのか
「鶫?」
「はい…」
返事をする声が震える



