「…はい。」 だから、天野さんの忠告にも私は曖昧に頷くしかない。 「じゃあな。」 そんな私を一瞥した天野さんは、そのまま身を翻して直ぐに人混みに紛れ込んで見えなくなる。 「………ありがとうございました。」 ぽつりと零れ落ちた天野さんへの感謝の言葉。 その声は、彼に届く事はない。 この場に残るのは、天野さんの煙草の残り香だけ。 「ーーー天野、さん。」 不思議な人。 この香りだけが彼がいた証拠。