「…だったらとっとと消えろ。」 ただ、淡々とした声。 なのに、他者を動かしてしまう。 ―――その声が、私は怖いと心底思ったんだ。 「ひっ!っ、本当にすみませんでした!!」 頭を深々と下げたナンパ男は、私を見る事なく脱兎の如くその場を走り出す。 「……。」 そんなあっさりと逃げ出した彼を、私はただ唖然と見送るしかなくて。 …………助かった? 「…大丈夫か?」 「っっ、」 はっと天野さん見上げれば、彼はじっと、その漆黒の瞳で私を見下ろしていた。