「姉ちゃん?」





ホラー映画を観てる途中で邪魔されたからか、迷惑そうにしながらもあたしの頭を優しく撫でてくる北斗。



そんな北斗の服をぎゅっと握りしめながら、北斗の肩口に頭をおく。





「…寝れない」




嗚咽を漏らしながら北斗に抱きつく力を強くする。




「…はぁ」




重い溜息をついた北斗は、渋々といった感じにあたしの背中に腕を回してきた。



「だから姉ちゃんが居るところでホラー映画観たくなかったんだよ…」


「…だってお母さんとお父さん主張中で北斗しかいなくて寂しかったんだもん…」





だから離れたくなかった。と、ふて腐れながら言えば、




「…はぁ」



と、また重たい溜息をつかれた。



北斗の顔を見れば、眉間に皺を寄せて変な顔をしていた。



「ったく、世話の焼ける姉だな」




ぎゅっとさっきよりも強く抱きしめて、背中を一定のリズムでポンポン叩き始める。




「…北斗?」


「このまま寝ろよ」





困惑した感じに北斗の名前を呼べば、寝ろと命令された。



「…ん」




そんな態度にブスッとしながらも、北斗の背中を一定のリズムで叩く手に安心して瞼が重くなってくる。





「姉ちゃんおやすみ」


「…やすみ」





意識が遠のく寸前、北斗の優しい声が聞こえた。




寝ていたあたしは知る由もない。


自分の肩口に頭を置いて寝ているあたしを見て、北斗が口許を緩めていたことに。