そんなこんなで家まで来たあたしたち。





「姉ちゃん風呂ためるから」


「うん」





時計を見ればもう18時。



ソファに座ってお気に入りのクッションを抱きかかえているあたし。



その横に座る露崎遥。



北斗はお風呂当番でせっせと働いている。





お風呂やご飯の当番は、お父さんとお母さんが居ない今、あたしと北斗の二人で分担している。




「ルリ」




名前を呼ばれたから、その声の主をチラッと見る。




「俺のことが嫌いですか?」





あたしのことを呼び捨てにするくせに、敬語は使う。

おかしな年下。




いつも笑顔を浮かべてる姿からは想像も付かないようなしょんぼりした顔。


急にそんなことを聞いてきた意図はわからないけど、素直に答える。





「…嫌い」


「そうですか…」


「でも、」





あたしの言葉に顔をあげた露崎遥。




「…映画観てるときの露崎遥は嫌いじゃなかった」





恥ずかしくなったあたしは抱きかかえていたクッションに顔をうずめる。









だから、露崎遥が嬉しそうに顔を破顔させていたなんてあたしは知らない。