教室に入ると、有莉沙はいなくて、変わりに唯翔の姿があった。


「あれ、唯翔、ミーティングじゃないの?」


「え?知らねぇけど。そうなのか?」

きょとん、とする唯翔。

あたしは、鞄を机の脇に提げながら言った。


「え、あたしがまどかといたら、ミーティングだって奈々加ちゃんが呼びにきたけど」

「奈々加が?」


奈々加という名前を出したら、唯翔の表情が曇った。

焦りというより、戸惑った表情。


「ちょっと彼方に聞いてくる」


唯翔は立ち上がり、彼方のクラスのほうに走っていった。


ミーティングじゃないの?


えぇ?なに?

どういうつもり、あの子。



「芽衣、ミーティングなんてないって言われたんだけど」


少し息を乱して戻ってきた唯翔のその言葉に、あたしは動揺した。


なんのために、奈々加は嘘をついたんだろう。

まさか、あたしがまどかといたから?

だからって、あの子に都合の悪いことでもあった?

自分の情報が、あたしにバレる。


そこから、あたしが唯翔に話して印象を悪くしたくないみたいなことなんだろうか。


もうよくわからない。
頭が混乱してきた。