『バタンッ』

私が電柱にもたれかかって音楽をイヤホンで聴いていると、いかにも高級そうな黒い車に乗った父親が来た。
そして私を見下ろして、

「やはりお前は………。」

そう言いかけて、何故か言うのを父親はやめた。
何を言いたかったんだ。まあどうせろくなこと言わないんだろうけど。

「早く乗れ。付き添いの婦警さんも、来るのが遅くなりすみませんでした。お疲れ様でした。」

「あ、はい…。」

お父さん、いつからこんな冷たかったっけ…。
娘としては悲しいなぁ………。

「ぁ……あのっ!!!」

その時、桐山くんの大きな声が後ろから聞こえた。
いたんだ桐山くん…。気付かなかった…。

「佐久さん!また明日ね!!」

そう言って桐山君は眩しい笑顔を私に向けた。

『ドキッ』

その時、懐かしい感情がまた蘇った。
そんな気がした。
抱いてはいけない。そんな感情が…。
そしてその眩しい笑顔は、思い出しては行けないあの人と、重なって見えた…。
そんな時、

「……………おい。君は何ていう名前なんだ。」

父親が私達を割って入った。

「え?あ、桐山 悠也、ですけど…。」

「コイツにあまり関わるな。」

………………は?

「え、どういう…。」

「話しは以上だ。すまなかったな。」

確かに私は病気のせいで他の人に近付けれない。
けどそれを桐山君にいう必要あった?
私は酷く苛立ち、頭が沸騰しそうになった。
けれど、桐山くんのいる手前、何も言えなかった。

「行くぞ。」

私は父親に手首を引っ張られた。
けれどそれを振り払い、キッと父親を睨んだ後、父親が乗ってきた車に乗った。
父親が酷く悲しそうな顔をしているなんて知らずに…。