「あの、今日は何を描いてるの?」


膝の上のスケッチブックを指差しながら問いかける。顔を上げた真央くんは、私の瞳を覗き込むようにじっと見た。

真意を探るようなその目に、やっぱりいいです、と言いかければ、不意に真央くんはマグカップを私に差し出した。

反射的にそれを受け取ると、甘い香りがまた鼻腔をくすぐる。すん、と鼻をひくつかせれば、真央くんが口を開いた。


(飲、め、ば)


一文字ずつ大きく動いた口。私の都合の良い解釈では、そう言っているように思えた。

真央くんに嘘を吐いても遠慮をしても、きっとすぐにバレる。別にいい、なんて今さらだ。


「ひ、一口貰ってもいい……?」


控えめに首を傾げると、真央くんは頷く。その答えに甘えて温かいマグカップに口をつけると、ココア特有の甘さが広がった。

美味しい、と呟いて真央くんを見ると、スケッチブックを私に見えるように持っていて。


「……あ」


そこに描かれていた絵に、思わず言葉に詰まった。