「その紙袋なに?」

「あ、手土産に羊羹を」

「え~、そんなのいいのに~」


わざわざありがとね、と笑う紫苑先輩は艶のある黒髪をハーフアップにしていた。ゆるっと巻かれた毛先が歩くたびに揺れて可愛い。いつもより念入りに施されているお化粧と、控えめな甘さのフローラルの香りを纏っていた。

どこからどう見ても美人な女子高生にしか見えない。

そんな紫苑先輩の衝撃的な事実を知った日から数日。私は放課後の部活をさぼって、紫苑先輩と一緒にある人の元へと向かっていた。


「本当に私がついていってもいいんですか?」

「いいのいいの。絶対喜ぶから」


ふわり。花が咲くような笑顔を浮かべて、紫苑先輩は私を安心させるように頭を撫でてくれる。その手は確かに細くて綺麗だけれど、意識してみると女の人にしては大きく、骨張っていた。

あの日、頭の中が真っ白になった私は、オネエってことですか、と無意識的に聞いていた。口にしてから、かなりデリケートなことを直球で聞いてしまったと後悔したけれど、そうねえ、と紫苑先輩は少し考えるような素振りを見せて、こう言ったのだった。


「性的マイノリティーってわけではないのよ、私」

「性的マイノリティー……?」