「そういえば、ステラ様。ヴェルズには侍女も護衛もつけずに、たったお一人で滞在なさるというのは本当ですか?」



ジェラール王から聞いたのであろう。


ヴェルズへの旅についての会議で、ステラに同行する武官や文官を選抜していたところ、

ステラが『同盟の締結も、ヴェルズでの滞在も、私ひとりでやります』と言い、

周囲をどよめかせたのも記憶に新しい。



結局、皆の説得により、旅と同盟の締結は宰相を筆頭に同行するが、

滞在はステラ一人で行うことが決まった。



「やはり安全の為にも、数名ほど護衛をつけたほうが良いのでは?」



「大丈夫ですよ。侍女はヴェルズにもいますし、“友好の証”として迎えて下さるのですから、万が一のことなど起こりませんよ」



そもそも護衛などつけたらその国を信用していないといっていることになる。


両国の関係を改善させるために行くのに、逆に悪化させては元も子もない。





城の中心にある塔から、出立の時刻を知らせるように、鐘が鳴り響いた。


「時間だな……」


「ええ」


「どうかお元気で」


「ありがとうございます」



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