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(ラズラエザに二度と帰れないなんて、考えたことなかったな……)
この国の女王となって、婿をとって、
一生この国に捧げるつもりだった。
出発は3日後。
ステラはその準備に勤しんでいた。
しかしその手取りは重く、手を止め、考えることがしばしばだった。
(ヴェルズに行けば……)
今までのような自由な時間はないかもしれない。
「姉上。ユアンです」
「ユアン?入っていいわよ」
失礼します。という言葉とともに入ってきたユアンは酷く疲れた顔をしている。
その顔を見て、ステラは「情けない……」というかのように微笑すると、再び手を動かし始めた。
そのステラの動きを静止させるようにユアンはステラの腕をつかんだ。
「姉上……やはりどうにかしてこの国に残れるように考えましょう。女性の身で遠国へ行くなんて……私が王太子を名乗って代わりにヴェルズへいきますから」
ステラは首を横に振り、右腕をつかんでいるユアンの手をそっとはなした。
「私が行くわ。ラズラエザの王太子は私。それに心配しなくても、戦の指揮や兵士の治療のために戦地へ行くこともあるのだから、遠国での生活は平気よ」
ステラは父親から戦の指揮を学び、母親から医術の教えを受けていたため、
今まで戦地へ赴くことも少なくなかったのだ。
それはユアンも十分に理解していた。