王宮の秘薬


「この瞳が証でございます」


「ほう……」


ステラは小さく深呼吸し、話を続けた。



「この赤い瞳は魔力を示す瞳。ラズラエザ王国ではどの妃が産んだ子でも魔力が高い者、つまり瞳の赤が強いものが国王となります。実際に、現ラズラエザ国王と先王は叔父と甥の関係でございます」



「なるほど。勇ましくも戦場に立ち、多くの鮮血を見てきたような瞳だな。美しいぞ」


そう言ったスカーレット公の口角は上がっていたが、目は笑っていなかった。





終戦条約と同盟締結の調印式は、目を疑うほど形式的で、呆気ないものだった。


多くの文官たちの視線を感じながらステラは式典の部屋を後にした。



「殿下。我々の役目はこれで終わりました。これにてラズラエザに戻ります」



宰相が長い間不在だとラズラエザの政治は混乱してしまうだろう。

ましてや敗戦直後なのだ。



「ステラ様。どうかご無事で……必ず本国にお戻り下さい」


「ええ……。出来るだけ早く帰ります」



宰相はステラに深々と礼をした後、率いてきた従者全員を連れて去っていった。



(ここからは1人ね……)


ステラは小さくため息をついた。



「ステラ様」


大扉から出て行く従者たちを見送った直後、背後から声をかけられた。


やはり何度その姿を見ても、右目の黒い眼帯が印象的だ。



「今日はお疲れでしょう。お部屋にご案内いたします」


「はい……」