王宮の秘薬


* * * * *


調印式の行われる場所は王宮の奥にある、式典のための部屋だった。


中央奥にはヴェルズ宰相らしき人が座っており、その左右には大勢の文官たちが立っていた。



ヴェルズの国王は見当たらない。



ラズラエザ側の国王が来ていないなら、ヴェルズ王の出る幕はないということだろうか。


「ラズラエザ王国宰相のレゼッストでございます。この度は条約締結のために貴国に参りました」



この調印式は両宰相を中心に行われる。


身分で言えば、王太子であるステラの方が上だが、

外交関係は宰相が筆頭になるため、ステラは後ろに控えていた。


「ヴェルズ王国宰相スカーレットだ。長旅ご苦労であった。ところで、その者が王太子である証拠は?」


「……は?」


スカーレット公の視線は宰相からステラへと変わった。


「そなたはおそらく側室の王女だろう。ラズラエザ王と王妃の間に王子がいたはずだが。その王子が王太子ではないのか?自分の言葉で答えるがよい」



周囲がざわめき始めた。


一斉にステラに視線を注がれる。


(これは……試されているのね)

敗戦国の王女がどのような態度を示すかを。


スカーレット公はステラが王太子だと知っているのだろう。


この答え方次第で、ラズラエザとヴェルズの位置関係がハッキリする。


下手に出れば、ラズラエザはヴェルズに支配されることを認めたことになる。



(堂々としたらいいのよ……)



ならば―