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調印式の行われる場所は王宮の奥にある、式典のための部屋だった。
中央奥にはヴェルズ宰相らしき人が座っており、その左右には大勢の文官たちが立っていた。
ヴェルズの国王は見当たらない。
ラズラエザ側の国王が来ていないなら、ヴェルズ王の出る幕はないということだろうか。
「ラズラエザ王国宰相のレゼッストでございます。この度は条約締結のために貴国に参りました」
この調印式は両宰相を中心に行われる。
身分で言えば、王太子であるステラの方が上だが、
外交関係は宰相が筆頭になるため、ステラは後ろに控えていた。
「ヴェルズ王国宰相スカーレットだ。長旅ご苦労であった。ところで、その者が王太子である証拠は?」
「……は?」
スカーレット公の視線は宰相からステラへと変わった。
「そなたはおそらく側室の王女だろう。ラズラエザ王と王妃の間に王子がいたはずだが。その王子が王太子ではないのか?自分の言葉で答えるがよい」
周囲がざわめき始めた。
一斉にステラに視線を注がれる。
(これは……試されているのね)
敗戦国の王女がどのような態度を示すかを。
スカーレット公はステラが王太子だと知っているのだろう。
この答え方次第で、ラズラエザとヴェルズの位置関係がハッキリする。
下手に出れば、ラズラエザはヴェルズに支配されることを認めたことになる。
(堂々としたらいいのよ……)
ならば―

