「そういえば、ラズラエザには後宮はありませんでしたね。後宮の姫君……つまり、王妃候補の方々です。今では約300人もの王妃候補の姫様方が後宮で生活なさっておられます」
「300人……!?」
王妃を後宮から選ぶことは珍しくないにせよ、
300人もの女性が暮らす後宮などは、世界広しといえど聞いたことがなかった。
「貴族から平民まで身分はさまざまで……中には、ウェスト公国の公女様もおられますよ」
ウェスト公国―ヴェルズと友好関係にある国のひとつだ。
おそらく親善大使だろう
(まさか……私も後宮に……?)
「ご心配なく、ウェスト公女様は後宮に入ることを目的としてヴェルズに来られました。ステラ様には後宮ではなく王宮にお部屋を用意してありますよ」
思惑が顔に出でいたのだろうか。
ステラが質問する前にレオは笑みを浮かべながらそう言った。
「あの女がラズラエザの王太子なの?」
「私てっきり王子が来るのだと思っていたわ」
「なあに、あの赤い目」
いたるところからステラを評価する声が聞こえてきた。
そのほとんどは酷評。
(そうか、ヴェルズは魔力を持たない者がほとんどだから、目が赤いのは珍しいのね……)
ヴェルズの後宮では自分はあまり歓迎されていないのだと理解した。