王宮の秘薬


戦を始めたのはラズラエザではなく、ヴェルズだった。


魔法や多文化共生の概念が薄いヴェルズにとって、

様々な種族が一緒に生活するラズラエザは理解しがたい文化であったことに加え、

豊かな自然に盛んな工業、豊富な知識人はまた魅力的だった。



そんなラズラエザを我が手中にと名乗りを上げたのが、亡きヴェルズ先王。



小さな島国相手の戦などすぐに終わるだろうと思われた。



しかし、思いがけず接戦で、進展はないが死傷者だけは増え続ける、

血で血を洗うような状態はヴェルズ先王が病死してもなお続いた。



そして、ヴェルズに新国王が即位してしばらくたったのち、ラズラエザに降伏を求めてきたのだった。



(そうよね……しっかりしなくては……)



「ええ……ありがとう」




* * * * *



翌朝、予定より早く目が覚めたステラは、女将が勧めてくれた野風呂へ向かうことにした。


部屋からそう離れていない場所にあったため、宿の者の助けを借りず行くことができた。



「わあ。綺麗……」



風呂は石造りで濁り湯。

四方向に木々が生い茂り、揺れる若葉の隙間から昇った朝日がかすかに差し込んでいた。