よいしょっと。
大きな扉を両手で押し開く。
「あれ?帰ってきたの??」
ピエちゃんがひらひらと手を振った。
「もう走りすぎで疲れた」
「アズの事ずっと見てるけどさ、こんなに真剣になったの姫奈だけだぜ?」
「そりゃそうだよ。アタシも初めてだもん。アズみたいに本気でぶつかってくれたの」
顔を見合わせて笑った時、ピエちゃんともやっと分かりあえた気がした。
きっとアズが大切だから……そうやって遠くから守って来たんだな?アズ母が収入を得られてるのもひょっとして「坊っちゃん」のおかげだったり!?
もちろん聞いた所で「殺す」って言われるに決まってるから聞かねーけど。
「お母さん、ちょっとだけ時間を下さい」
勝負に勝ったのかさっきより表情が幾分優しくなってるアズ母がこっちを向いた。
「さっきの子やん。まぁええで?今日は勝ったしな。これであの人も喜んでくれるわ」
「その”あの人”の事なんですけど……」
「どうかしたん?」
「お母さんに話を聞いてもらえなかったからレストランまで行って来たんです。そしたらウエイトレスに手を出したってクビになってました!!」
「なんやって!?」
小刻みに肩が震えてるのがわかる。
そう、この人は可哀想な人。
信じてついて来たのに裏切られてしまったんだから。



