ぜぇぜぇ……。
はぁはぁ……。
この階段は一体何段あるんですか???
「日本一見晴らしのいい展望台はこっち→」
「世界を展望できる素敵な場所まであと少し」
「疲れたら、ちょっと休もうでも負けるな!!」
「ここまで来て引き返すなんてもったいない」
ふぅ……。
言葉巧み?な看板に心の中で悪態をつきながら(もうすでに言葉を発する気力なんかある訳ないし)一歩一歩歩いていく。
俺は基本的に負けず嫌い。ここまで来て帰れるかっつーの。
「頑張って!!」
逞しい手が俺の小さな手を優しく掴んで引き上げる。
和樹はホントに強い。
運動部だから当たり前かもしれないけど……それって姫奈の為なんだよな?ある意味。
俺達はまだ働いて生きていく事も出来なくて、親には逆らえなくて、だからすがりたいんだ。こんな子供騙しみたいなイベントでも。信じたいんだ……よな?
なぁ、和樹。俺だってホントは一緒にいたいさ。
でも言えないんだ。
俺はお前と違って軟弱だからまだどこかで変わるんじゃないか?転勤がなくなるんじゃいか?
そんな甘い事を考えていて。
離れる直前まで淡い夢を見ていたい。あとは一人で受け止めるだけ。
そんな俺は勝手なんだろうな。
「姫奈!頂上見えたよ!!」
可愛い和樹。俺はその笑顔を守ってやれなくて……それって男としては最低だって分かってるよ。



