男の斜め後ろを付いていくように歩いていた。
向かっている間は沈黙が続いた。
途中でその沈黙を破ったのは男の方だった。
「そういえば、名前は何ていうんですか?」
「...あ、あの、失礼かもしれませんが、聞く前にあなたの方からお願いします」
おずおずとそう言った私に、男は少し目を見開いた。
だが、それは一瞬のことで、すぐに目を細めニコッと笑い、口を開いた。
「そうですね、失礼しました。...僕の名前は、沖田総司(オキタ ソウジ)です」
「私は、稲葉風香です」
私たちは名前を言い合ったら、再び黙った。
そっか、この人が沖田さんか....。
ヒラメ顔だ....。
納得しながら歩いていると、屯所に着いた。
屯所というのはネットで見たりして知っていたけど、生(なま)で見たのは初めてだな....。
「何してるんですか、行きますよ」
「あ、はい」
沖田さんに付いていくと、一つの襖(フスマ)の前で止まった。
沖田さんは何故か少し息を吸った。
そして。
「土方さぁぁぁぁん、入りますよぉぉぉぉ!!!」
スパァーーーンッ__!
と、大きな声で言い思いっきり戸を開けた。
しかも相手の返事も待たず。
すると中に居たらしき男が、沖田さんより大きな声で返事を返してきた。
「うるせぇぇぇえ!!!勝手に開けんじゃねぇって何度も言ってるだろうがぁぁぁ!!!」
この後は、男二人の言い合いが行われていた。