「.....」
....あれ?どこも痛くない...?
「...っおゎ!」
おそるおそる目を開けてみると、
私の足元には先程私に斬りかかろうとした男が血を流し倒れていた。
呆気にとられている、と隣に居た男が私に話し掛けてきた。
「大丈夫ですか~?危なかったですね。
こういう輩(やから)には気を付けた方がいいですよ、すぐ斬りかかるので」
話し掛けてきた男は、端整な顔立ちでニコリと笑った。
そして、浅葱色(アサギイロ)の羽織を着ていた。
...ん?浅葱色の羽織?しかもあの袖元にある山形の模様...見覚えがあるな.....。
...っぁあ!あの羽織、新撰組だ!
嘘みたい....本物に会えた.....。
それにしても、誰だろう....。
私が黙り込んでいると、新撰組の羽織を着た男がもう一度話し掛けてきた。
「あのー、どうかしましたか?」
「あっ、いえ、なんでもないです....」
「?...まあ、いいですけど。それにしてもあなた、変わった着物を着てますね」
男が笑顔を浮かべながら聞いてきた。
だが、その笑顔の陰には黒い何かが見えた。
「そうですか?」
帰っている途中にここに来たから、私は今制服を着ていた。
たしかにこの時代の人にしてみれば、制服というのは変な格好だ。
「怪しいですね~、ちょっと一緒に屯所(トンショ)まで来てもらいましょうか」
「え....あ、はい.....」
男があまりにも黒い笑みで笑うから、怖くて否定する言葉も出て来なかった。