食堂に着き俺はチャーシュー麺、琴音は牛丼定食を頼んだ。


「零って本当にラーメン好きよね。朝からそんなこってりしたものよく食べられるわね…」


「お前に言われたくないぜよ…。」

溜め息を交えた声が出た。


だが朝から脂っこい物を食べる光景は朝練がある部活の人なら当たり前の事である。


そうしないと体力が持たないのだ。



「しかしアンタが奢るとは珍しいわね。そう言えばアンタ、コンビニでバイトしているんだっけ?」


「コンビニは去年の話だろ。今はスーパーだ。因みにコンビニは一ヶ月でやめた。」

そう、零は一時コンビニでアルバイトをしていたが、お隣のパチンコ屋でボロ負けして発狂したドカタと喧嘩して辞めた…というよりクビになった。



「そう言えば零って茶道やっているんだねぇ。今度暇なとき見学行って良い?」

零は嫌な予感がした。と言うのは琴音はお喋りだから俺の昔の話をペラペラ喋るから嫌なんだ。





こんな言葉がある。

1つ晒せば己を晒す。

2つ晒せば全てが見える。

3つ晒せば地獄が見える。




つまり、俺の過去が飛鳥や桜花さんに知られたら嫌われてしまうかも知れない。

せっかく大金を掴んで将来国を獲ると言う夢への足掛かりが出来たのに、嫌われたら、その夢を掴むことすら出来なくなってしまう。




「来るな…。お前はペラペラと人の過去を平気で言うからな。」


琴音は少し考える。

「じゃあさ、今日の武道の授業って男女合同の剣道じゃん。それであたしに勝てたら変な話はしないわよ。」


「はぁ?お前と俺じゃあ明らかに俺が不利だろ…。」


実は琴音は剣道の強豪村沢高校の大将格で、その才能は中学時代から有名であった。

零も昔は琴音と剣道をしていたが、それは小学生の時の話で、今戦ったら零の敗けは避けられない。


「大丈夫だってアンタにも勝機があるわよ。あたし授業じゃ本気出さないし。」


これならひょっとしたら勝てると思った零は勝負を受ける。


「良いだろう。久々に俺の本気を見せてやる。」