「もっとする?」

 明季は小さく頷いた。自分の唇を指さし、ねだる。すっかり冷えてしまった身体に、唇から熱をわけてほしい。また、唇が重なった。そっと熱の侵入を許して熱をわけてもらう。

「今度は明季からして?」

 触れるだけのキスをすると、洋一は不満げに明季を見つめた。

「それだけならもう3回はしてくれないと足りないかなー。」
「…じゃあ、3回。」

 1回目は1秒。

「許可なく触らない。」

 2回目は2秒。

「嘘はつかない。」

 3回目は、少し長く。想いが伝わるように。まだ言えていない、二文字の想い。

「ずっと傍にいる。…洋一がしてくれた約束と同じ回数。」
「…明季からされると、こう…なんかくるな。うん。3回と言わずもっと…。」
「…ばか。」
「ばかでいいよ。…明季がちゅーしてくれんなら。」
「もうしない、し…。」
「俺からするからいっか。」
「んー!」

 長く唇を封じられるときにする目を一瞬見せ、洋一の唇は明季のを塞いだ。唇が重なることを楽しむように啄まれ、頬を優しく撫でられる。そして突然強引に割って入ったかと思えば、その先は優しくて甘いのだからタチが悪い。

「…あのね、洋一。」
「なにかな、明季ちゃん。」
「…ありがとうって、言おうと思ったんだよ、あたし。」
「ん?」

 明季は熱くなった頬を押さえて口を開いた。

「約束をありがとう。」
「…どういたしまして。ありがとうの気持ちをこめてちゅーは?」
「…さっきした。」
「もう1回!」
「…洋一のキスは長いんだもん。」
「でも、嫌いじゃないだろ?」
「…だって、洋一がくれるものだし。嫌いじゃないよ、優しいもん。」
「あー…あんまり煽んなって。ちゅー以上のことしちゃうぞ。」
「明日早いから嫌。」
「だったら黙って寝てください!」

 明季の身体がすっぽり埋まってしまう洋一の身体に身を預ける。ぎゅっと回る腕に安心して、明季は目を閉じる。

「…おやすみ、洋一。」
「あー…お前、明日土曜だから今日の夜は覚えておけよ。」
「…はーい。」

*fin*