* * *

「美海が心配してた。お前らのこと。」
「…あー…松下さんのこと借りたしな。」
「悩んでる?」

 不意にストレートを打ち込んでくる奴だと知っている。それでも、浅井の真っ直ぐな瞳に貫かれると、自分は周りにそう見えていたのかと思って少しがっかりした。

「…そう見えた?」
「俺には。」
「あー…わかりやすすぎか、俺。」
「越前は基本的にわかりやすいと思うけど。」
「松下さんより?」
「…美海は、隠そうとしてたから。」
「それなんだよなぁ…。それでも、お前はちゃんと気付いたんだろ、最終的には。」
「…どうなんだろう。気付いたところもあったけど、でも話すと決めたのは美海だけど。」
「だから、話すと決めさせたのはお前の態度じゃん。多分。」
「越前は何がしたいわけ?相談?それとも俺はお前のどこにたどり着くかわからないこの話を聞き続けるだけでいいの?」
「…よくない。」

 浅井に八つ当たりしている場合じゃないことは知っている。

「浅井はさぁ…。」
「うん。」
「どうやって松下さんに近付いたの?」
「何か、その言い方だと俺、すげー悪いやつみたい。」
「…距離の埋め方が、わかんなくて。」
「いつも友達に囲まれてる越前がそういうこと言うの、変な感じ。」
「…だって明季は友達じゃねーもん。」
「なるほど、一理ある。」

 興味深そうにそう言った浅井は少し楽しそうだ。洋一は全く楽しくない。

「それで、身動きが取れなくなってるのはなんで?」
「…ここでそれを聞いてくれるお前って本当にいいやつ。」
「そのいいやつ、から抜けるのが大変だったけどな。」
「それなんだよ!」

 大学の食堂に、洋一の大声が響いた。