【着信;お父さん】



体の芯が熱い。

けれど、指先はどんどん冷たくなっていくような感覚。


「すいません……私ちょっと電話、家からで……」


携帯を手に、私の隣に座るリカさんに声をかけて立ち上がった。

私はそのまま、店の外に出ると、通話ボタンを押した。



「もしもし……」


足が向かうのは、店の裏側で。自然に人が居ない方を選ぶ。


『麻衣?』


少し遠慮がちに。だけど、はっきりと私の名を口にした。


「お父さん……久しぶりだね」

『ああ……』


何を言えばいいのか分からず、取り合えず無難な言葉を選んで話す。

手は冷たいのに、僅かにかく汗。
Tシャツの裾を握り、手汗を気にしないようにした。