「うっ……くっ!」

悲鳴を堪らえるお母様だけど、もう体は限界に近づいていた。

ぬらりひょんは、私をお母様から引き剥がす。

「いやっ!お母様!!」

「凛っ!!」

『この子は、次の蘆屋家の後継ぎですか、力をつけられては困る』

私の首筋に、刀が近づく。

「ひっ!」

「やめて!その子だけは!」

『これは、とてもいい姿だ。ワシは最後に、おまえさんのその姿を見れてよかったよ』

私は、この時死を覚悟した。

私が夜のお散歩したいなんて言わなければ、こんなことにはならなかった。

私がいなければお母様は、こんなに傷つかずに済んだ。

私の中では、後悔ばかりが広がっていた。

『さようなら、蘆屋の後継ぎよ』

「いやぁぁぁ!!」

お母様の叫び声とともに、ぬらりひょんは刀を振り上げる。

そのときだった。

『──この気配はっ!!』

ぬらりひょんは、私を放り投げると後方へと飛んだ。

「けほ、けほ」

「凛っ!」

「お母様っ!」

私は、すぐにお母様の元へと駆け寄る。

「遅れてすまなかったな」

私たちのすぐ近くで、男の人の声が聞こえた。

「もう……、本当にいつも遅いんだから“銀”」

銀と呼ばれた人は、私を見下ろしてきた。