「なんだ蘆屋、やりたいならそう言いなさい」

先生は、うんうんと頷きながら黒板に私の名前を書く。

「ちょ、ちょっと待ってください先生!!」

私の言葉を遮るように、姫菜子が言う。

「先生!凛は、恥ずかしくて言えなかったそうです」

こ、このぉぉ!!

「別に恥ずかしがることじゃないぞ。こういうことを進んでやるのは、良いことなんだぞ」

「は、はい……」

先生!私の話しを聞いてください!!

「じゃぁ、あと一人は柴野でいいのか?」

「すみません。やりたいのはやまやま何ですけど、習い事が多くて」

そこで嘘つかなくてもいいじゃん!

私を巻き込んでおいて一人で逃げるなんて!

「んじゃぁ、あと一人は」

「はい!」

「えっ?」

私と姫菜子は、一人の男の子へと目を向ける。

「僕がやります」

手を挙げたのは、クラスの委員長の達磨凌(たつましのぐ)だった。

「じゃぁ、二人で決まりだな。二人とも頑張れよ」

「はっ!」

「良かったね、これで凛空先輩と一緒だよ」

(もしかして、姫菜子の狙いはそれか!)

これは悪夢だ、お願いだから今すぐ覚めて!

私が悩んでいる最中、凌が私の方を見ていたことに私は気づかなかった。

時間はお昼へと変わり、私はイライラしながらお弁当を食べていた。

「本当にごめんってば!」

「信じられない。まさか友達を売るようなことするなんて!」

「だって、集会中ずっと凛空先輩見てたじゃない?だから、実行委員やりたいと思ってさ」

「そんなこと思ってない!実行委員の話し聞いてなかったのさっき知ったよね?!」

「あれ?そうだったかしら?」

「もぅ!!」

凛空を見ていたことは認めるけど、実行委員なんてやるつもりはなかった。

「でもいいじゃん、イケメンの達磨君と一緒なんだから」

「なんでそこでラッキーと思える要素が出てくるの?」

「だって達磨君イケメンだし、優しいし、女の子たちから人気あるんだよ?」

「そんなのどうでもいいんだけど」

だから何だって言うの?

イケメンや優しくたって、凛空の方がいいよ。