【凛空】

「俺は、お前のことが好きだよ」

「り、凛空?!」

「……。なんてな」

「はっ?」

俺は掴んでいた手を離し起き上がる。

勾陳が作った薬が効いているのか、傷口はあまり痛まなかった。

「お前が深刻そうな顔で俺を見下ろしていたから、からかっただけだ」

「ひ、ひど!意地悪!」

凛は、頬を膨らませて怒っているが、すぐまた暗い表情へと戻る。

「凛空、ごめんね」

「なにが?」

「だって……」

凛のやつ、もしかして俺の傷のことを気にしているのか?

別に凛が謝るようなことじゃない。

「お前のせいじゃない、だから気にするな」

俺は優しく凛の頭を撫でる。

「俺はまだ弱い。だからこの傷は、自分のせいであいつにやられたんだ」

「怖かった……。ぬらりひょんが姿を現したとき体が震えた。でも、一番怖かったのは、凛空がぬらりひょんに斬られたときだった!」

「なんで?」

「凛空が死んじゃうかと思ったから」

凛の体は今でも震えていた。

そうだ。

薫子さんは、凛の目の前でぬらりひょんに斬られたんだ。

おそらく俺が斬られたとき、薫子さんと俺が重なって見えたんだろう。