『殺す……人間……、殺す……』

「あいつ、様子がおかしいぞ」

「どういうこと?」

「普通の妖は、滅多に言葉なんて話さない。だが、鬼の妖の中でも言葉を話す者はいる。だが、あの鬼の話し方はおかしい」

「となると、誰かに操られているのかもしれない」

でも、騰蛇は容赦なく火の球を鬼の妖に向かって放つ。

「悪いが死んでもらうぞ、ここの空間はあまり好きじゃねぇんだわ」

鬼の妖は、大声をあげながら炎の中へと消えていった。

「さすが、騰蛇だな」

「別に、主の命令とあらば誰だろうが殺す」

「それは、凛を守るためか?」

「そうだ。もうあんな思いはたくさんだからな」

騰蛇は、拳に力を入れた。

騰蛇は、きっと一番悲しんだんだと思う。

お母様を守れなかったことが──