「そんな……?!」

私の目の前に、鬼の妖が姿を現す。

距離はそんなに離れていない。

「な、んで?さっき私と反対方向に行ったはずなのに、そんな簡単に私を見つけられるなんて……」

鬼の妖は、拳を振りかざし私に向かって走ってくる。

「どうなってるの!?」

私は、再び化学室の方向へと走り出す。

「もしかして、私の居場所が分かるのは、あの妖の結界の中だから?!」

もしそうだとするなら、私に逃げ場なんてない。

「きゃっ!」

その時、私は何かに足首を掴まれる。

そして、そのまま倒れ込でしまい、私は自分の足首に目を向けた。

すると、私の足首を掴んでいたのは、壁から通り抜けて伸びる鬼の妖の手だった。

「嘘でしょ…」

なんとか鬼の妖の手を振り払おうと足を動かすが、強く掴まれているせいでびくともしない。

「これじゃぁ、捕まっちゃう!」

私が鬼の妖の手を振り払おうと足を動かしている最中に、鬼の妖は私の目の前へと来ていた。

よく見ると、鬼の妖は壁の中へと手を入れていた。

(あの手が私の足を……)

鬼の妖は、壁から手を抜くと私に向かって手を伸ばしてくる。