【凛】

「ん……」

目を覚ました私は、顔を上げ時計を見る。

「深夜一時前か……」

よく寝たと思う。

「妖の気配が所々から感じられる」

しかし、まだ化学室の中に妖の気配は感じられない。

「まだ現れてないのかな?」

立ち上がって窓の外を見ようとした時、突然薬品棚の戸が開けられ、中にあった一つのビンが落ち割れる。

「この気配……」

薬品棚の方に目を向け、割れたビンの中から黒い靄みたいな物が流れ出ている。

その靄は、徐々に妖の姿へと変わっていく。

そして、その靄は鬼の妖へと姿を変えた。

「なるほど、どおりで妖の気配を感じられなかったはずだよ。ビンの中にいて靄へと姿を変えていたんだから」

鬼の妖は低く唸ると、大きな拳を私へと振り下ろした。

私はそれをうまく避けて化学室から出る。

「妖たちがこの学校で動くのは、深夜一時から四時までの間、三時間逃げ切れれば私の勝ちだ!」

化学室から離れてすぐ近くの角を曲がり、私は一旦そこで止まる。

背中を壁につけて、鬼の妖の様子をうかがう。

鬼の妖は、私とは反対方向にゆっくりと歩いていった。

「はぁ……」

なんとか行ってくれた。

でも、見つかるのは時間の問題だし捕まったら確実に殺される。

各る溜め息をついた私は、後ろの方を振り向いた時目を疑った。