【ぬらりひょん】

その頃、俺たちの知らないところでは―――。

ぬらりひょんは、戦い疲れて森の中を歩いていた。

『はぁ…はぁ…』

今でも自分の中で浮かぶのは、あの光景…。

凛音を切った時、知世音の姿が重なった。

俺は、木に寄りかかる。

『…知世音……』

俺は、涙が流れる顔に手を当てる。

その時―――。

どこからか赤子の鳴き声が聞こえてきた。

『……』

俺は、それに引き寄せらるよう、赤子の居るところへと向かう。

赤子は、男の腕の中で泣いていた。

『この男は……』

確か、秦とか言う男だったよな。

背中には、大きな引っかき傷が残っていた。

『妖に殺られたのか……』

俺は、その赤子を抱き上げる。

『こいつ、新しい一族の子供か……』

なら、力を付けられては困る…。

俺は、刀を抜こうとしたが、それを辞めた。

知世音が生きていたら、こんな子供が生まれたのか……。

知世音は、俺を庇って死んだ。

腹の中には、俺の子が居たのに…。

『知世音……、俺は……』

守れなかった。