【空】

「……凛音…」

『思惑どおりだ』

俺の隣に、じい様が姿を現す。

「じい様……」

「お前も見ただろ、凛音の覚醒を」

俺は、じい様から目を背ける。

「あれが、新しい一族の力だ。意識を怒りや憎しみに呑ませることで、本来の力を発揮させる」

「それが、新しい一族なのかよ……」

じい様は頷くと、一枚の符を取り出す。

「その符は!」

「凛音に六道輪廻の術をかける」

「そんなことをしてどうする!凛音の魂を何に使うつもりだ!」

じい様は、俺を見る。

「ぬらりひょんを凛音に倒させる」

「え…」

「ぬらりひょんの寿命は長い。この先ぬらりひょんと同等に戦えるのは凛音だけだ」

「だからって、凛音の魂を何度も生まれ変わらせるのかよ!!」

俺は、村雨をじい様に向ける。

「そんなこと、させない」

「お前は、この先の未来がどうなってもいいと思うのか?」

「いいわけねぇ。だけど、俺たちが未来を決める権利もない!」

その時―――

『さっきからうるせぇよ』

じい様と俺の後にぬらりひょんが姿を現す。

「なに!」

ぬらりひょんは、容赦なくじい様を切り捨てた。

「じい様!!」

「晴明様!!」

勾陣がじい様に近寄る。

「…この怪我では……」

じい様には、既に意識はなく、即死だった。

「ぬらりひょん……」

ぬらりひょんは、凛音と刀を交えている。

「あの凛音様……、怖い……」

「凛音……」

凛音が遠くに感じた。

今の凛音は、怒りと憎しみだけで戦っている。

「俺に、どうしろって言うんだよ!!」

俺は、力を込めた拳を地面へと叩きつける。

「俺は、凛音を守るためにここまで来たのに……。守れてないじゃないか!!」

「空様…」

「くそ……くそっ!!」