「その方が、お前たちとっては好都合だろ」

「どういうことだ?」

「今回の妖怪大戦で、凛音を死んだことにすれば、お前は天と自由になれる。その時空も死んだことにすれば、お前たちは遠くの静かな場所で一緒に暮らせる」

「空と一緒に…」

考えてもみなかった…。

そうだ、この妖怪大戦を上手く使えば、私と空は死んだことになる。

「でも、天はどうするだ?」

「天も死んだことにする。妖に食われたとでも言えば良いだろう」

「そ、そうか…。でも、秦はどうする?」

「俺は、どっちにしろ妖怪大戦に出ないんだ。蘆屋の裏切り者として、追われるだろうな」

「そ、それじゃぁ!」

「そこから先は言うな」

秦は、私の唇を指でおさえる。

「俺の事はどうだっていい、お前は自分のことを考えろ」

「…分かった。すまない秦…」

秦には、ずっと辛い役目ばかり頼んできた。

今回もそうだ…。

「泣くなよ。俺は、お前たちが幸せならそれでいい。それに――」

秦は、私の手を握った。

「俺は、お前と祝言をあげられて良かった。天の本当の父親ではないが、自分にも子供ができたみたいで幸せだった」

秦は、私に笑顔を向けていった。

「ありがとな、凛音」

その言葉が私のなかで響く。

涙がこぼれそうになり、私はそれをおさえた。