「とりあえず、行ってみるか…」

もしかしたら、私の見間違いかもしれない。

廊下を歩き続け、そろそろ教室が見えてもいい頃なのに、辿り着く教室はただ一つだった。

「な、何で…?!」

私は、化学室の中へと入る。

「問題があるとするなら、ここだけ……」

でも、妖の気配は感じられない。

化学室の扉を閉めて、窓の方へと近づく。

窓の外は、夕日が山に隠れようとしていて校庭には誰も居ない。

「もしかして、この学校にいるのは私だけ?」

そんなに時間は経っていないはずなのに。

「さっきまで凛空といて、この化学室に来るまでに二十分もかかってはいない」

私は、ゆっくりと隠れていく夕日を見つめる。

(もしかして、別の空間に閉じ込められた?!)

窓の鍵を開けようと手を伸ばした時、窓に触れた私の指先は見えない何かによって弾き返された。

「いたっ!」

どうやら、この教室周辺には妖による結界が張られているみたい。