【知世音】

祝言が終わって数日後、私は貴族の方の元に行くことになった。

「寂しくなりますね」

「私なら大丈夫です。また、会いに行きます」

「待っています。凛音も気を付けてくださいね」

「はい…」

私は、牛車に乗り貴族の方が待つ屋敷へと向かう。

「凛音、貴方に黙っていたことを許してください」

私は、外の景色を見て目を細める。

(この先、私がどうなるのか…。何が起こるのか、私は全て知っています)

しばらく山道を通った牛車は、突然止まる。

(私たち陰陽師の血を持つものが見る夢は…)

現実となり…。

凛音は、牛車が向かった方向に目を向ける。

「姉様…?」

前簾が取られ、男の声が聞こえた。

『よぉ、知世音』

私は、死ぬのです。