「確かにそうだな、でも二人だけの祝言は悪くない」

「そうだね」

私たちは、互いに笑いあいもう一度だけ口づけを交わす。

「じゃぁ、俺はいく。今度会うのは、腹の中の子供と一緒だ」

「絶対会いに行く」

空は、障子を開け周りを見回すと、部屋から出ていった。

「二人だけの祝言か…」

空に握られた手には、空の温もりがまだ残っている。

「凛音、入るぞ」

すると、今度は秦が入ってきた。

「おい、そろそろ時間だぞ…」

「どうした?」

「いや、着飾るとお前も綺麗なんだな」

「どういう意味!」

「そう怒るなよ」

秦は、私に手を差し出す。

「お手をどうぞ、お姫様」

「姫じゃないし…」

私は、秦の隣を通りすぎる。

「おい、そのままじゃ歩き方づらいだろ?」

「ご心配なく、姉様に歩き方教わったので」

「さすが、凛音だな」

秦は、やれやれって感じで、私の隣を歩く。

「そういえば、子供の名前は決まってるのか?」

「うん、空が考えてくれた」

私は、歩く足を止めて空を見上げる。

「この子の名前は、天(てん)だ。天高く、どこまでもいけるようにと――」