「そうですか、秦様との子供ですか」

「え?!こ、勾陳待って!」

勾陳は、立ち上がりもとの符に戻ろうとする。

「他に何か用事でもありますか?」

勾陳の目が鋭く、私は言いたかった事を引っ込めてしまった。

「な、何でもないです……」

「なら良いですね。あとこの事は父上様にもお伝えします」

「え、何で!」

そんなこと言ったら、私と秦は──。

「黙っているわけにもいきません。蘆屋の後継ぎが生まれるんですから」

勾陳は、そう言うともとの符に戻ってしまった。

「な……、何で……?」

私は、すぐ隣りに立っている秦を睨みつける。

「どういうつもり?」

「だって、お前困っていただろ」

「そうだけど。この子は、秦の子供じゃないのに」

「そんなの分かってるよ」

秦は、私の目線に合わせてしゃがみ込んだ。

「腹の中の子供の父親は、安倍空だろ?」

「えっ」

な、んで……。

何で秦は、そんな事が分かるの?

だって、私たちは夜にしか会っていなくて、夜遅くに家を出ているから、秦は知らないはずなのに。

「本当のことは、言わなくてもいい。だけど、このままだとその子供は殺されるぞ」

「そうだけど、でもこの子は──」

「その子を殺したいのか!」

秦の力強い口調に思わずビクッとなってしまった。