その時、急に空が後ろから私を抱きしめられた。

「そ、空?!何してるの、離れてよ!」

「いいから、最後まで聞け!」

私は、空が何を考えているのか分からなかった。

何でこんなことをするんだ。

私は決めたのに、お前から離れるって。

空も私から離れることを決めたんだろ?

なのに、何でこんなことを?

「ぬらりひょんを倒したあと、お前を迎えに行く」

「えっ!」

空は、私の耳元でそう呟いた。

「迎えに行くって、どういうことだ?」

「全ての戦いが終われば、陰陽師は要らなくなる。それに、安倍家には後継ぎが出来る。そうすれば、俺はお前と一緒になれる」

「だけど、それは!」

「分かってるさ、これは叶わない想いかもしれない。だけど、俺は必ず迎えに行く」

空は、私から離れると言った。

「だって、やっぱ捨てらんねぇよ。この想いだけは」

私は、空を見つめる。

そして、涙がこぼれた。

「空。私もやっぱり……」

この想いを捨てることは出来ない。

空が大好きだから。

「でも、お前に会うことはもう出来ない」

「分かってる。でも、この想いがあれば、私は空に会えなくても、空が好きなことには変わらない」

「俺も同じだ。遠くに行くわけではない、ただ会えなくなるだけだ。俺は、いつでもお前の傍にいる」

「うん!」

私たちは、互いに抱きしめあった。

月明かりの下、私たちは最後の口づけを交わした。

空は、いつでも私の傍に居てくれる。

この想いと、空が傍に居てくれると思えれば、私は強くなれる気がした。