「どこまで行くつもりなんだ?」

「もう少しだ」

ここまでだいぶ歩いてきたが、空の呼吸が荒くなり始めている。

やっぱり、体を動かすのは早かったと思う。

そんな空の様子を、勾陳は後ろからじっと見ていた。

「ここだ、この先だ」

私たちの目の前は、茂みで覆われていた。

「勾陳、ここから先は二人きりにしてくれ」

「……。分かりました」

勾陳は、もとの符に戻ると私の懐へと戻った。

「凛音、目をつぶってくれないか?」

「あぁ」

私は、右目を閉じる。

右目を閉じると、自分は本当に真っ暗な空間の中にいるように感じた。

だけど、直ぐに空が手を握ってくれた。

それが嬉しくて、つい握り返してしまった。

(これで最後なんだ、だからいいだろ)

空に手を引っ張られながら、私は空の後ろを歩いていく。

「目開けてもいいぞ」

空に言われて、目を開けた時、私は目の前の景色に歓声を上げた。

「わぁ!綺麗だな!」

目の前に広がっていたのは、一面に広がる青い花たちだった。

その青い花は、月の光に照らされきらきらと輝いていた。

「いつか、ここをお前に見せたいと思っていたんだ。俺の秘密の場所」

空は、青い花を一つ取ると私の髪に付けてくれた。

「なぁ、この花はなんて言うんだ?」

「さぁな、俺は花には詳しくないからな」

「そうか、でもこの花は好きだ」

風が花を揺らしていて、花びらが目の前を舞っていて、花びらが舞を踊っているみたいだ。