輪廻転生 絆が繋ぐ運命の転生 上

【凛音】

「ねぇお母様、立派な陰陽師ってどういう人?」

「それはね……」

幼い頃の記憶の夢を私は見ていた。

お母様の事をあまり覚えていないけど、かすかに記憶は残っている。

「それはね、凛音が自分で見つけるの」

「自分で?」

「人それぞれ陰陽師のなり方は違うし、陰陽師になって思うことも違う。だから、凛音は陰陽師になって、これが自分の目指した陰陽師だって思った時が、立派な陰陽師じゃないのかしら?」

「なんか、よく分からない」

「まだ凛音には、先のお話よ。でもね凛音、これだけは覚えていてね」

「なぁに?お母様」

「──っ」

そこで、私は目を覚ました。

「ん……」

お母様は、最後になんて言っていたのかな?

私は、起き上がり外を見る。

外はすっかり暗くなっていて、月の光が部屋の中へと差し込んでいた。

「綺麗だな……」

こんなにじっくりと月を見たことがなかったから、月が綺麗なことに初めて気づいた。

「起きたか?凛音」

「空?!」

すると、障子に空が寄りかかっていて、空も月を見上げていた。

「体の方はもう良いのか?」

「いや、治るのには時間はかかるみたいだ。そのせいで、見張りが付いてる」

よく見ると、空の隣には勾陳が座っていた。

「勾陳……、ありがとう手当をしてくれて」

「いえ……」

相変わらずそっけなく返される。

「凛音、これから行きたい場所があるんだ」

「こんな遅くにか?」

「あぁ、そこで俺はお前に話したいことがある」

その時の空の目は、私をとらえていて、何かを決めたようにも見えた。

(私に、話したいこと?)

私も空に言わなくちゃいけないことがある。

「私も、空に伝えたいことがある」

今伝えないと、もう伝える機会はなくなってしまう。

安倍家から出た私たちは、森の方へと向かって歩いていく。