「凛音?」

「えっ?」

聞き覚えのある声が聞こえて、私は振り返った。

「ち、知世音(ちよね)姉様……」

そこには、私の二つ年上の知世音姉様が心配そうに私を見下ろしていた。

「姉様(あねさま)、何でここに?!」

「貴方が大怪我を負ったっと聞いたから、心配して来たのよ」

「す、すみません。心配をかけました」

姉様は、蘆屋家の中で一番美しい女性と言われている。

確かに、姉様は綺麗で優しくて気品があって私にとっては憧れの姉様だ。

「いいのよ凛音、貴方が無事でしたのだから」

「姉様……」

私は、姉様から視線を外す。

「良かった、本当に貴方が無事で」

姉様は、私の近くに座ると私の頭を優しく撫でてくれた。

(温かい……)

姉様は、小さい頃から誰よりも私を心配してくれていた。

妖退治で長く家を空けて帰ってきた時だって、姉様は誰よりも早く私のところへと来てくれた。

そして、必ず私の頭を撫でてくれる。

「凛音、貴方に言っておかなければならないことがあります」

「言っておかなければならないことですか?」

姉様の様子は、それを言うのをためらっているように見えた。

「凛音には、続けて辛い想いをさせることを許してください」

「どういうことですか?」

「兄様が亡くなられました」

「……えっ?!」

兄様が死んだ?!

どういうこと?!