「凛空……、お兄ちゃん……」

「凛……」

凛は、俺の顔を見てホッとしたのか俺に抱きついてきた。

「お母様が……うぅ……、お母様が!!」

なんて言葉をかけたら良いのか分らなかった。

俺は、ただ凛が泣き止むまで優しく抱きしめていた。

その後は、異変に気づいた俺の母親が来て、凛の父親とお兄さんも駆けつけて来た。

どうしてこうなったのかを凛に聞こうとしたが、あいつは何も話さなかった。

葬式が行われた後も、あいつはずっと泣いていた。

ずっと一人で──

それでも俺は、勉強をすることをやめなかった。

だけど、凛の泣き顔が頭から離れなくて、俺は一年近くあいつの傍にいた。

最初は、泣き止むまで居てやるつもりだったけど、いつしか俺の中では、もう一度あいつの笑顔を見たいと思っていた。

凛を守りたいと思った。

しばらくして、凛が落ち着いたところを見て聞いた。

あの日起こったことを、凛はゆっくりと話してくれた。

夜の散歩のこと、ぬらりひょんのこと、母親の死を、妖の銀のことを──

俺は、凛が話し終わるまで手を握ってあげていた。