「ぐっ!」

私は、斬られた人物を目の当たりにして名を叫ぶ。

「空!!」

空は村雨を抜くと、最後に鬼蜘蛛を切り捨てた。

『ふふふ……、馬鹿なやつだお前は……。その女を庇わなければ、毒に侵されることもなかったのに……な……』

鬼蜘蛛は、そう言い捨てると、埃となって消えてしまった。

「馬鹿はお前だ……」

「空!!」

私は、倒れかける空の体を支える。

「空!しっかりして!」

さっき鬼蜘蛛に斬りつけられたところから、毒の正気が上がっていた。

「これくらい……、なんともねぇ……」

空は、私の頬に手を当てる。

「お前が無事で良かった」

「空……」

私は、自分の着ている着物を破り、空の傷口に当てる。

『そんなことをしても無駄だ』

「っ!!」

私は、ぬらりひょんに目を向ける。

『その毒では、その男は長くはない』

「そんなっ!」

『まぁ、こっちにとっては好都合だ』

「ぬらりひょん!」

空は、村雨を持って立ち上がろうとする。

『そんな体では無理だ』

ぬらりひょんは、私を見つめるとカッと目を見開く。

「えっ?!」

ぬらりひょんと目があった時、私の左目が急に暗くなった。

「きゃぁぁぁ!!」

私は、左目を抑えて倒れ込む。

「凛音?!」

急に左目に激痛が走り、目の前の景色が真っ暗になった。

これは一体何?

ぬらりひょんは、私に何をしたの?!

『そいつから見鬼の才を半分奪った。もう左目は使い物にならないだろうな』

「ぬらりひょん!貴様!!」

ぬらりひょんは、刀をしまうと霧の方へと再び歩き出す。